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絵本存続の危機


絵本の新しい風

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        2017・12・ 3 琵琶湖上の大満月

2017年最後の月、12月に入った。
せわしそうで、そうでもない、妙な気分だ。
冷静を保ちたいと思いながら、そうはならない。
これが、人生の黄昏を生きる者の心境なのかもしれない。

先日、京都の東本願寺へお参りに出かけた。修学旅行の
子どもたちでいっぱいだった。この時期、意外と外国人
観光客は少ない。のんびりと歩いて書店の絵本売り場に
立ち寄った。絵本売り場が、以前の半分以下に縮小され、
置かれている絵本の数も極端に少なくなっていた。
折角立ち寄ったので、数少ない絵本の中から、最近の絵
本を探して、数冊購入した。

前回、紹介した漫画、矢部太郎作『大家さんと僕』が1
か月で11万部売れたとのことだ。信じられない想像を
絶する数字だ。
やはり、いい本は売れるということのようだ。羨ましい
話だ。矢部さんの本のテーマに何となく似た絵本を探し
てしまった。というよりも、買ってしまった。これは矢
部さんの影響だ。
その本は、角野栄子作、山本浩二絵『さあ、なげますよ』
文渓堂。

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ノビ君というボール投げの名人とおばあさんのキャッチ
ボールの話だ。子どもとおばあさんの関係がまず、矢部
さんの本に似ている。
ノビ君が壁を相手に一人でボールを投げていると、家の
持ち主の小さなおばあさんが現れて、私がボール投げの
相手をしてやると言い、キャッチボールがはじまる。お
ばあさんは見かけによらず、なかなかしたたかで丈夫だ。
ユーモラスでもある。二人は夕方までキャッチボールを
して、玉の投げっこをしながら帰っていくという話だ。
ピッチャー経験者として、扉のノビ君の投げ方の絵に違
和感を感じるが、見開きの二人のキャッチボールの絵は
さすがと唸らされる。
おばあちゃんとノビ君のキャッチボールは、玉の投げ合
いをしながら、心のキャッチボールでもあった。それ以
上に、年寄りの元気さとパワーを侮るなかれという警鐘
でもあったのかもしれない。年寄りは、この先ますます
これまでに蓄えた知恵と力と執念を若者に伝えていく責
任がある。

『ぎゅっ』で知られるジェズ・オールバラの待望の新刊
『あそぶ!』徳間書店が出版されたので求めた。『ぎゅ
っ』、『たかいたかい』、『やだ!』徳間書店
に次ぐ4
作目かと思われる。


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相変わらず、表情がかわいい。愛おしくなるぐらいよく
表現されている。書名になっている「あそぶ!」という
コトバが繰り返され、その他のコトバもほとんど一語文
だ。主人公のジョジョの気持ちになって、表現すると、
より豊かな表情を感じ取れるし、全体のほのぼの感が深
く心に沈み込んでくる。

これまでの2冊に対して、この後の2冊は、少々、思考
の重さを求められる。理解困難な部分に引かれる悪い癖
から購入したといってもいいが、今後の絵本を左右する
存在感を示す絵本でもある。

新宮晋さんはよく知られた風や水など自然エネルギーで
動く彫刻家であると同時に、絵本作家でもある。きっと
近くの美術館で彼の動く彫刻を見かけたことがあるので
はないかと思う。絵本も自然をテーマにした作品が多い。
『いちご』文化出版局の出現は、鮮烈なものがあった。
初めてこの作品を見て、長い時間見とれていたことを思
い出す。その後、『じんべいざめ』文化出版局は、私が
ジンベイザメに憧れていたこともあって、感動して、毎
日見ていた。以前、アサギマダラについて書いたとき
『旅する蝶』文化出版局
を紹介したことがある。その他
にも素晴らしい作品が沢山あるので、一度このブログで、
新宮さんの作品を並べてみたいと考えているところだ。
今回購入した新刊は、『太陽といっしょ』クレヨンハウ
だ。

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新宮さんのこれまでの絵本と違って、油絵で描かれている。
何か理由があるのだろうか。太陽が主役だから、太陽を表
現するための手段だろうか。太陽を光と陰で表現して、し
かも太陽が上から輝くことを意識してか、俯瞰的手法の絵
が多くなっている。自然重視の姿勢にぶれはない。ガソリ
ン車ではなく、移動手段は自転車だ。豊かで美しい自然の
中を自転車は走り、悠久の自然を彷彿させるような森の中
を恐竜が走り、不気味な霧に包まれて、太陽と共に、光と
陰が自然の流れのつながりを、巧みに表現している。

夜が明けるとき、風が吹くというが、どうしてなのだろう。
その秘密を明かすのが、長田真作『風のよりどころ』図書刊

行会かもしれない。
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夜の闇が、夜明けのあかりに向けて、さまざまな夜の霊を集
めて夜明けに向けて走り出すのが、夜明けの風なのだろうか。
『風のよりどころ』を見ていても、なかなか、疑問は解明さ
れない。ただただ不可解なだけだ。
この本の目指しているものは何か。簡単には見つけられない。
極めて難解で不気味な絵本だ。長田真という鬼才現るといった
ところだろうか。絵本の帯に五味太郎さんが「くらやみに き
づいた きみのめは たしかだ。それから・・・」と推薦文を
書いている。これまた不可解な言葉で、混乱させられる。五味
さん自身がわかっているのだろうかと疑問になってくる。
もう少し、絵本とにらめっこして不可解を解き明かしてみたい。

最近書店を見て歩いて、置かれている絵本が、とても軽くて
浅いか、難しくて理解困難か、両極端のように思われる。こ
れでは、絵本を求める人も何を求めたらいいのか困るだろう。
日本で最初にできた絵本専門店「メルヘンハウス」が閉店した
と報道されている。開店時より、よくお邪魔してお世話になっ
た店だけに残念だ。ここまで絵本業界は厳しくなってきたとい
う証なのだろうか。何とかして、子ども固有の文化財である絵
本を守ろうと努力してきたが、ただただ無念としか言いようが
ない。

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     2017年12月1日の琵琶湖と虹




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Commented by こあら at 2017-12-03 02:54 x
「大家さんと僕」三省堂書店で、平積みされてたので、すぐにみつかりました。
グングン引き込まれ、心がホカホカしながら読み終えました。初めは、大家さんとの距離の近さに戸惑い警戒していた矢部さんが、一緒に過ごす程に、大家さんの温かさ、かわいらしさに、ほっこりして、私も幸せな気持ちになりました。
矢部さんは、随分前に「さんまのスーパーカラクリテレビ」の、空手同好会で「エイシャラー」と弱々しい、いつもカチカチの型をやっていた事を、思い出しました。
大家さんと一緒に出かけた旅行先が、知覧で、特攻日平和記念館! 私も、一度は、行きたいと思ってます。足砂蒸し中の大家さんが、可愛いですねぇ
続編が、楽しみです。
漫画は、ビッグコミックオリジナル、BELOVE、Elegancイブなど5種類程を毎月必ず読んでいます。(絵本でなくてすみません)
絵本だまりで紹介してくださった絵本は、三省堂書店では、あまり見つけられません。メルヘンハウスのことが、尚更のこととても残念です。
Commented by ehondamari at 2017-12-04 11:20
こあらさん
やっぱり『大家さんと僕』は、誰もが評価する漫画ですね。新聞各社、週刊誌、雑誌などで大きく取り上げられています。1か月で11万部も売れるときの感覚はいかがなものでしょうか。味わってみたい。
私の本と比べて雲泥の差で、トホホであります。いい本は売れる、だが、いい本がないから本が売れないということになってしまうのでしょうか。粗製乱造の活字文化にも問題があったのかもしれません。売れないのに、本はたくさん出ていますが、本屋はなくなっていくばかりです。
活字文化が絶滅危惧種にならないように祈りたいものです。
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by ehondamari | 2017-12-02 22:21 | 絵本と子育て・保育 | Comments(2)

絵本で潤いのある生活を楽しむ


by ehondamari