今日は1日中青空だった。
1昨日、アンソニー・ブラウンさんの『ボールのまじゅつしウイリー』
を取り上げた。サッカーが大好きなウイリーが魔術にかかったような、
サッカーの試合での大活躍は痛快だった。
実は、ウイリーは、サッカーだけではなくて、絵を書くのも大好きだ。
そんな絵本が出版されているので、見ていただきたい。
アンソニー・ブラウン作・絵(なかがわちひろ)『ウイリーの絵』ポプラ社
2000年(2002年翻訳)
訳者のあとがきに、この絵本の見どころが面白く紹介されている。
絵が大好きなウイリーが絵を描いた。といっても、世界中の美術館
に飾られている有名な絵にしたのだ。このように有名なものをまね
ることを、パロディいう。このパロディには、パロディがあるもの
だが、ウイリーは何を伝えたくて書いたのかが、注目されるところ
だ。そのことにつて、訳者のなかがわちひろさんは、「絵を見ると
きの『遊び心』だと思う」と言っている。
さらに、「絵の中は、なんでもありの、ふしぎな世界。美術鑑賞だ
なんてかまえずに、ぼんやり、気ままに散歩するような気持ちで、
ながめてみるのもよいものです。そうしてみると、ウイリーの絵
は遊びがたくさんかくれた散歩道」と言われることが、とっても
納得できる。
美術鑑賞だなんて構えないで、散歩しながら何かを探したり、ウ
イリーの遊び心を楽しめばいいということだろう。
有名な絵は16枚使われていて、それ以外に、その有名な絵の中に
別の有名な絵8枚が使われている。この8枚は部分が少しずつ隠さ
れている。みんなでで探しっこを楽しもう。
最初に、これからあちこちに出てくる登場人物を紹介しておこう。
この3人の顔と名前をよく覚えておいてほしい。
ウイリーは絵を描くのが大好き。面白い絵を描いてみました。
すみから すみまでよく見てね。いろんなものが見つかるよ。
この言葉ではじまる。
最初から絵を見る楽しみを教えてくれている。
最初に紹介したいのはこの絵だ。おっと、しつれい!んもう、デカハナったら! はやく タオル かけなよ。
この原画は、サンドロ・ポッティチェリの「ヴィーナスの誕生」だが、何だか本物とは違い過ぎる。品のいいきれいな絵が、だいなしだ。
すなのおしろ天まで とどくおしろをつくっちゃおうかなあ。おや、おしろが「ダメダメ」って さわいでる。・・・どうして
この原画は、ピーテル・ブリューゲル父の作品。この塔をが建てられるのを見て、神が人間の思い上がりを懲らしめようと、それまでひとつだった言葉を地上のあちこちに、いくつもに分けて散らばし、いろんなが外国語が出来て、塔が建て続けられなかったということが聖書にあるようだ。ウイリーはこの塔を砂で建て替えてしまったので、大きな塔を作れば壊れてしまうという、砂上の楼閣の話だ。でも、ウイリーが描いている絵だからどれだけでも描けるのだ。とにかくいろいろなものがぎっしり描かれていて、全部見つけ出すのは大変だ。見つけられるものだけ見つければいい。
てん、て、てん・・・、なんかへん「ねえウイリーここのてんき へんじゃない?」「うん、でも、ほかにも へんなものがいっぱいあるよ」
ジョルジュ・スーラの有名な「グランド・ジャット島の日曜日の午後」だ。スーラは、明るい色の小さな点だけで光の眩しさを、とてもよくあらわしている。原画と比べたら、おかしなことがいっぱいある。ギュスターヴ・カイユポットの「パリの通り、雨」も紛れ込んでいる。なぜこの絵に雨が降っているのか?ちょっとおかしい。
しんせつなおばさんたちてつだってくれて ありがとう。くさを かくのって たいへんなんだ。もう、おなかも すいちゃった。
ジャン・フランソワ・ミレーの「落ち穂拾い」だ。この絵は本来3人の女の人が,落ち穂ひろいをしているのだが、2人しかいない。その代わりに、ウイリーが登場している。バックの絵に遊び心が一杯で、それを見るのを忘れないで見て欲しい。
なぞの ほほえみなぞのモデル、なぞのけしき、さあ、きみには このなぞが とけるか?
あまりにも有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」だ。有名でありながら、謎ばかりの絵だ。ウイリーがその謎を解いてくれるかも。
とりあえずは、モナ・リザの後ろに描かれた動物は、何匹いるのだろう?モナ・リザの左横に入れ歯が描かれている。この歯とモナ・リザの不思議な微笑みとは、大きな関係がありそうだ。入れ歯をはめたらどんな顔になるのか。
ながめのわるいへやなんて つまらない まどだろう。そうだ、すてきなまどに しちゃえばいいんだ!
原画は、ヤン・フェルメールの「画家のアトリエ(絵画芸術の寓意)」だ。フェルメールの絵は、落ち着いた絵だ。ウイリーが窓に描いている絵は、カスパー・ダーヴィッド・フリードリッヒの「真昼」の絵が使われている。とに角、いろいろ楽しませてくれる。この絵を読み解くのには、何時間あっても足りない。
最後のページで、「ウイリーの絵の元になった絵を見てみよう。それぞれの絵には、また別の物語がある。ウイリーがどこに、どの絵を使ったかをあててごらん。ウイリーのことばも読んでね。」
この絵本を見て、子どもが自分も絵を描いてみると言ったらすごいなあ。実物を確かめに行きたいと言ったら、もっとすごいなあ。アンソニー・ブラウンさんは、多才な方だ。『ウイリーの絵』の中で出てくる有名な絵を知るだけでも大変だが、このいくつかの絵を元にして、様々な遊びを展開して、元の絵とは違った物語を創り出している。この技術だけでも相当なものだ。絵本に登場する絵を全部載せられたらいいのだが、それは大変なことなので、素に一部だけにとどめさせていただいた。ムンクの「叫び」も見ていただきたかった。芸術の秋です。ウイリーと一緒に、絵を存分に楽しみ、遊ぼう。
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