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ゆっくり・のんびり・おっとり



今日は、我が言動を振り返りながら、『はらぺこあおむし』で知られる
エリックカールさんの絵本を取り上げる。

エリック・カール作(くどうなおこ)、ジェーン・グドール前書き
『ゆっくりがいっぱい!』偕成社 2003年

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エリック・カールさんが、この絵本の裏表紙に、主人公のナマケモノ
の紹介をしている。少し長くなるが、引用してなぜナマケモノを、エ
リック・カールさんが取り上げたかを読み取っていただきたい。
「なんで いつも いそいでいるんだろう? はやく はやく はや
く!って ばたばた あわてて しごと ちょこちょこゲームに む
ちゅう そして いそげや いそげ! パチンと きりかえ!
テレビをみたり ファーストフードをたべたり―― みんな ぼくらに
いうんだ きびきび やれ! いそげ! じかんが なくなるぞ! ふ
みつけていけ! こんなんじゃ ともだちといっしょに ゆうひをみた
り よぞらのほしを みあげたりー―なんて するひまがないよ
ああ――ほんのすこしでもいいから――ものしずかな ナマケモノから
なにかを かんじとってかんじとってくれたらなあ
ゆっくり のんびり おっとりと えだをつたって ほんのすこし たべ
 たくさん ねむり ものしずかかに へいわにいきる ナマケモノのすが
たから」

いつも自分対して、ゆっくり、のんびりと言い聞かせているのだが、どう
やら、その逆でいらいら、せかせか、カリカリしているように思う。
反省の意味でも、今一度しっかり読み直したい。絵本の中で、南アフリカ
で動物を研究した動物学者のジェーン・グドールさんが、ナマケモノの生態
を丁寧に説明しておられる。これもとても参考になる。

少々前置きが長くなりすぎたようなので、早速ストーリーに入っていきたい。

「ゆっくり のんびり おっとり きのえだをつたって ナマケモノくん 
やってくる」

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このぺーじでは、ナマケモノくん意外にヤマアラシとモルフォチョウが
現れる。
これ以降でも、ナマケモノのいるところに、必ず他の動物が現れる。それ
は各ページ同じように続く。動物同様、各ページが「ゆっくり のんびり
 おっとりと・・・」は必ず入ってくる。以降はこれを省く。
「・・・ナマケモノくん はっぱを たべる」
そこへは、ヘビやコンコゴウインコが集まってくる。
次は、ナマケモノくんはすやすや眠るが、そこには、ピューマとイワドリ
が一緒だ。
目が覚めると、アルマジロとハチドリがやってきた。
朝から晩まで、ナマケモノくんは、木の上で逆さまにぶらりんこ。
そこへ、カンムリハシリスクとバクがやてくる。

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朝から晩まで、ナマケモノくん、木の上で逆さまに、ぶらりんこだ。
夜は、ハナクマとコウモリがやってくる。
雨が降って木の上でさかさにぶらりんこだ。
雨の中、ベッカリーとヤドクカエルがやってくる。
このように、同じ言葉が繰り返され、そこに登場する動物は新しい動
物がどんどん現れる。でも、パターンは繰り返しだ。子どもにとって
の好みの繰り返しと子どもの動物好きは十分満たされ、興味は惹きつ
けられていく。

ここから少し、言葉もパターンも変化してくる。
「なんで そんなに ゆっくりなんだい?」ある日、ホエザルが聞い
たけど、ナマケモノくん、返事がない。

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登場するナマケモノくんの位置が、左から右に変わる。
ここでは、カメと、ケッアールとホエザルが登場する。
「なんで そんなに のんびりなんだい?」とワニも尋ねるが、ナマケモノ
くん返事がない。動物は、ワニとオオハシが登場する。
「なんで そんなに おっとりなんだい?」とアリクイが聞くが、返事はない。
ここでは、アリも登場する。

なんだか怖そうなジャガーが現れて、「なんで そんなに なまけてるんだい?」
と聞く。
ナマケモノくんは考えた。考えた。考えた。長ーい間考えた。
なんだか緊張が走る。動物は他にツメバケイ1羽だけだ。
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ナマケモノくんは、長考の末何といったのだろう。ジャジャジャーン!!
「そうだ ぼくは ゆっくり のんびり おっとりしている、ぼんやり
のそのそ ぐずぐずしている でも ばたばたしないで やんわり おち
つき じわっと ゆったり うごかずにいて じっくり おだやか ふん
わり ゆらゆら・・・だから そう ぼくのなかには<ゆっくり>が い
っぱい! くつろいで しずかに やすらかに すごすのが すきなんだ
でも なまけているんじゃないんだよ」
それから ナマケモノくん あくびをして 言った。「それが ぼくの
 やりかたさ ゆっくり のんびり おっとりが すきなのさ」
この言葉で締めくくられた。

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拍手、拍手の 大拍手ですよね。ナマケモノくんは素晴らしいのだ。
言葉のすばらしさだけでなく、冷静な対応のすばらしさは、お見事だ。
エリック・カールさんらしい絵本だと感心する。この絵本は、子どもだけ
ではなく、大人も読んでほしい絵本だ。特に私が読まないといけない絵本だ。

最近、気持ちがすっきりすることがあまりない。それどころか、腹立たしい
ことが多くて、イライラすることばかりだ。今一度、立ち止まって、ゆっく
り考えて、一度スピードを落としてみよう。とにかくぼちぼちいこかなんだ。
私に残されたカレンダーは少なくなってきているのだから、余計に「ゆっくり、
のんびり、おっとり」としっかり現在を見つめて、現在あることを大切にした
いと思う。

最後の登場した動物たち勢ぞろいで、おしまいだ。

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# by ehondamari | 2023-10-15 17:05 | Comments(4)

琵琶湖畔の秋色の風



いつものことながら、土曜日になると1週間の疲れが出てくるのか、
自然が醸し出す空気に触れて、リフレッシュしたくなる。
今日は、台風の影響か、午後には曇天になり雨の心配もあるという
予報だったので、午前早くに琵琶湖畔を散歩をすることにした。 

秋になると、和邇港付近での釣り客も、少なくなってきて、落ち着き
が深まって、心が穏やかになる。
いつもの場所なので、特別なことはない。でも細かに見ていくと、間
違いなく、秋の気配は深くなってきている。

和邇の砂浜当たりの様子から見ていただきたい。

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鴨の数が増えてきている。羽を休めている姿は元気そうだ。

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魚を捕獲する魞(えり)という仕掛けも、静かに獲物を誘い込んでいる。
沖には、ヨットが何艘かのんびり浮かんでいた。

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比良山の山頂辺りは、日本海からの低気圧の影響か、重そうな雲が覆っている。
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湖上には、秋の雲ばかり、雲の展覧会のように広く展開している。
この雲も、イスに座っておにぎりを食べているうちに、みるみる
湖の上空全体を覆ってしまった。
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サギたちは、いつもと変わることなく、悠々と琵琶湖のお守りをしていた。
秋のシラサギの姿も美しい。
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時々湖の様子を上空から見守っている。

アオサギも健在で、シラサギと一緒になって、琵琶湖を守っていた。

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カワウは湖を守るというよりも、エサ探しに懸命だった。水に潜るのも
なかなか上手だ。
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この場所に来るたびに、知らない花を見つけることが多く、嬉しい反面、
名前が分からない悔しさが、頭痛のたねだ。
今日は、ヨメナがたくさん群がって咲いていた。
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これまでに、何度も見ている花だが、なかなか名前が調べられなく、
そのままにしていたが、先ほど思い当たる花を調べたら、キツネノ
マゴということが分かった。
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一度名前にたどり着いたような気もするが、年のせいで、忘れてしまった。

下の花は、ニホンハッカと思われる。間違っていたら教えてください。
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下の花もよく見かけるし、名前を覚えたはずなのに、思い浮かばない。
ところが、やっと今調べて見つけた。
アキノノゲシで間違いないと思われる。
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とっても美しく感じられたのが、シロバナサクラダテだ。
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キンモクセイも満開に咲き、とてもいい香りが漂っていた。
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珍しくもないかもしれないが、湖畔に咲くミゾソバはとても美しい。
金平糖の形が、食欲をそそる。
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ツキミソウもまだ咲いていた。いつ見ても可憐で美しい。
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カラスウリも一個だけ見られたが、この色を見るとやはり秋を感じる。
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最後になるが、湖畔の桜も、季節を勘違いしてか、この秋に咲いていた。
勘違いは、私の特権かと思っていたが、桜のような立派な花も間違える
ことがあるようだ。少し安心した。
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最後の桜だけは、カワヅザクラだが、そのほかはヨシノザクラだ。

しばらくすると、比良山の山頂に雪が積もるだろうと、その姿
を思い浮かべた。
季節は足早に変化していく。


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# by ehondamari | 2023-10-14 15:52 | Comments(2)

幼稚園は夜も開いているの



最近は、子どものことが、なにかと話題に取り上げられることが多くなっている。
保育制度の大幅な改革で、子育てや保育の内容や方法も、どうなっているのかわ
かりづらくなってきている。
子ども・子育て支援制度の変更は、名称だけでも新しい言葉がたくさん出てきて、
その対処の仕方すらわからないというのが本音だ。
今日、取り上げようとしている絵本の幼稚園という言葉も、正確には、今では、
それでいいかどうか戸惑う。
とりあえず、分りやすいということで、数年前までの幼稚園と保育所の制度の
範囲で、とらえておきたいと思う。

谷川俊太郎文、中辻悦子絵・写真『よるのようちえん』福音館書店 1998年

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先日は、谷川俊太郎さんと元永定正さんのコンビで創られた絵本を
取り上げたが、今日の絵本は、谷川俊太郎さんと元永さんのパート
ナーの中辻悦子さんとのコラボでできた絵本を取り上げる。
幼稚園は、昼間は子どもたちの元気な声で賑やかだ。子どもたちが
家に帰った後、幼稚園はどうなっているのか少し気になるところだ。

絵本のはじまりは、
「ようちえんには だれも いません みんな うちにかえりました」

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ということは、夜の幼稚園は、誰もいない真っ暗な園舎があるだけとい
うことになる。ところが、
「そっとさんが かおをだしました そっとさんは きょろきょろりん」

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「すっとさんも きました すっとさんは すっ とん とん」
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「さっとさんも います さっとさんは さっさかせ」
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「じっとさんは じっとして じっとさんは ぷんぷくりん」
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このようにして、次々、夜の園児がやってくる。
この後、続いて出てくるのは、<ぜっとさん><もっとさん><ぱっとさん>
<ぽっとさん><ぬっとさん><おっとさん>たちだ。それぞれが、その前の
子たちが出てきたように、ここに特有の言動を持っている。
ここまででいったい何人?でてきたのかな。

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「すっとさんとぱっとさんは ふたりで ぱしゃりんこ」
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「ぜっとさんとそっとさんとぽっとさんは さんにんで こぺらけぺら」
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「だれかさんとだれかさんは だれかさんとだれかさんと もなもなみねむ」
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「すれたかぼびぷにゃ わらべにくらど みんなで なにして あそんで
るのかなあ」
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「そらがあかるくなってきました あれれ みんなどこかへきえちゃった」
「そっとさんのこえがきこえました さよよんならららーん
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さよよんならららーん

夜の園児は、昼間に来ている園児たちとはずいぶん様子が違う。
姿も形も違うし話し方も違う。
夜に現れる園児たちは、宇宙人の子どもたちのようだ。一人ひ
とりの言動はそれぞれ異なったものを持っている。言葉は宇宙語
のようで、ほとんどがオノパとぺになっている。保育者はいない
ようで、子どもたちだけで、行動しているのが、この夜の幼稚園
の特徴のようだ。
絵が元永さんから中辻さんに変わっても、話の展開はよく似ている。
たまには、こんなけた外れの絵本もいいのではないだろうか。
この絵本を読むときには、歌いながら読んだ方が、楽しさが膨ら
んで、絵本と読み手と聞き手が一体になって絵本を共有できると
考えられたのか、谷川さんの詩に息子さんの谷川賢作さんが曲を
つけておられる。巻末にその楽譜もついている。
保育でこの絵本を読むときは、歌も一緒につけてみんなで歌いな
がら楽しむ方法を考えて見るのも一考かと思う。

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# by ehondamari | 2023-10-13 17:09 | Comments(0)

遠方より来客迎え 心和む



10月も3分の1が過ぎて、秋の空気が冷え込んできた。
老いを重ねるたびに、冷気は心身を容赦なくいたぶる。

そんな年寄り2人を心配してか、昨日から3人の方が、
愛知県から遠路慰めに来てくれた。ありがたいことだ。
でも何一つもてなす術もなく、昨日は、短時間だったが、
我が家でおしゃべりして、近くの地酒屋さんに酒を買い
に行き、湖の浜辺まで散歩に出かけた。
何年ぶりに 会うのか、初めてお会いして、50年近くな
るのではないかと思う。お互いに生きて会えたことに感
謝しなければならない。長くつながっていることがあり
がたい。
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今日は、昨夜雄琴温泉に宿泊した3人と我々2人が一緒に、
鯖街道のわき道に入った旧街道にある、我々の隠れ家杢さん
に久しぶりに出かけた。

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目的は、もちろん親睦もあるが、最高の味を誇るソバ懐石
をいただきに伺った。
店の周りの山々は、まだ紅葉には程遠く、むしろ夏色が濃く
残っていた。店の前の川の水は限りなく透き通って美しく、
喧騒からは程遠く、物音ひとつしない静かな光景に包まれ
ている。10万ドルの静寂だ。

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料理は、マスターと女将さんの心温まるもてなしと心のこもった
おしい物ばかりだ。
全てがソバ尽くしで、お茶はそば茶とそばのオカキ。盛りソバは、
量は少ないが、最高の味で、美味だ。

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揚げた蕎麦がきも、他では食べられない逸品だ。

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ご飯は、ソバの実ととろろにウズラの卵だった。
素朴だが、味はしっかりお腹にはまり込んでくる。
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最後に出るコーヒーとケーキもなかなかなものだ。シホンケーキは
当然そば粉で作られている。どれも言葉では言い尽くせない、温も
りと愛情のこもった味だ。
言葉にすればそれだけなのとなってしまいそうだが、味わってみれ
ば、その感動は倍加するだろう。
3人の方は、鯖街道の鯖寿司で有名な「花折」で鯖寿司を買い、食
べるのを楽しみにいそいそと帰って行かれた。
皆さんそれぞれに忙しい事情を抱えておられるのに、本当に申し訳
なく思いつつ、感謝のしまくりだ。

帰宅したらルリタテハが、12日ぶりに1頭羽化して、早く飛び
立ちたくて、我々の帰りを玄関で待っていた。玄関を開けると、
大喜びで飛び立っていった。寒くなってきたので、元気で過ごし
てくれることを祈りたい。

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# by ehondamari | 2023-10-12 18:09 | Comments(0)

芸術の秋 ウイリーは絵を描く



今日は1日中青空だった。
1昨日、アンソニー・ブラウンさんの『ボールのまじゅつしウイリー』
を取り上げた。サッカーが大好きなウイリーが魔術にかかったような、
サッカーの試合での大活躍は痛快だった。
実は、ウイリーは、サッカーだけではなくて、絵を書くのも大好きだ。
そんな絵本が出版されているので、見ていただきたい。

アンソニー・ブラウン作・絵(なかがわちひろ)『ウイリーの絵』ポプラ社
2000年(2002年翻訳)

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訳者のあとがきに、この絵本の見どころが面白く紹介されている。
絵が大好きなウイリーが絵を描いた。といっても、世界中の美術館
に飾られている有名な絵にしたのだ。このように有名なものをまね
ることを、パロディいう。このパロディには、パロディがあるもの
だが、ウイリーは何を伝えたくて書いたのかが、注目されるところ
だ。そのことにつて、訳者のなかがわちひろさんは、「絵を見ると
きの『遊び心』だと思う」と言っている。
さらに、「絵の中は、なんでもありの、ふしぎな世界。美術鑑賞だ
なんてかまえずに、ぼんやり、気ままに散歩するような気持ちで、
ながめてみるのもよいものです。そうしてみると、ウイリーの絵
は遊びがたくさんかくれた散歩道」と言われることが、とっても
納得できる。
美術鑑賞だなんて構えないで、散歩しながら何かを探したり、ウ
イリーの遊び心を楽しめばいいということだろう。
有名な絵は16枚使われていて、それ以外に、その有名な絵の中に
別の有名な絵8枚が使われている。この8枚は部分が少しずつ隠さ
れている。みんなでで探しっこを楽しもう。

最初に、これからあちこちに出てくる登場人物を紹介しておこう。

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この3人の顔と名前をよく覚えておいてほしい。

ウイリーは絵を描くのが大好き。面白い絵を描いてみました。
すみから すみまでよく見てね。いろんなものが見つかるよ。
この言葉ではじまる。
最初から絵を見る楽しみを教えてくれている。

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最初に紹介したいのはこの絵だ。
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おっと、しつれい!
んもう、デカハナったら! はやく タオル かけなよ。

この原画は、サンドロ・ポッティチェリの「ヴィーナスの誕生」だが、
何だか本物とは違い過ぎる。品のいいきれいな絵が、だいなしだ。


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すなのおしろ
天まで とどくおしろをつくっちゃおうかなあ。
おや、おしろが「ダメダメ」って さわいでる。・・・どうして

この原画は、ピーテル・ブリューゲル父の作品。
この塔をが建てられるのを見て、神が人間の思い上がりを懲らしめ
ようと、それまでひとつだった言葉を地上のあちこちに、いくつもに
分けて散らばし、いろんなが外国語が出来て、塔が建て続けられなか
たということが聖書にあるようだ。
ウイリーはこの塔を砂で建て替えてしまったので、大きな塔を作れば
壊れてしまうという、砂上の楼閣の話だ。
でも、ウイリーが描いている絵だからどれだけでも描けるのだ。
とにかくいろいろなものがぎっしり描かれていて、全部見つけ出すの
は大変だ。見つけられるものだけ見つければいい。

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てん、て、てん・・・、なんかへん
「ねえウイリーここのてんき へんじゃない?」
「うん、でも、ほかにも へんなものがいっぱいあるよ」

ジョルジュ・スーラの有名な「グランド・ジャット島の日曜日の午後」だ。
スーラは、明るい色の小さな点だけで光の眩しさを、とてもよくあらわし
ている。
原画と比べたら、おかしなことがいっぱいある。
ギュスターヴ・カイユポットの「パリの通り、雨」も紛れ込んでいる。
なぜこの絵に雨が降っているのか?ちょっとおかしい。

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しんせつなおばさんたち
てつだってくれて ありがとう。くさを かくのって たいへんなんだ。
もう、おなかも すいちゃった。

ジャン・フランソワ・ミレーの「落ち穂拾い」だ。
この絵は本来3人の女の人が,落ち穂ひろいをしているのだが、2人しか
いない。その代わりに、ウイリーが登場している。
バックの絵に遊び心が一杯で、それを見るのを忘れないで見て欲しい。

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なぞの ほほえみ
なぞのモデル、なぞのけしき、さあ、きみには このなぞが とけるか?

あまりにも有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」だ。
有名でありながら、謎ばかりの絵だ。ウイリーがその謎を解いてくれるかも。
とりあえずは、モナ・リザの後ろに描かれた動物は、何匹いるのだろう?
モナ・リザの左横に入れ歯が描かれている。この歯とモナ・リザの不思議な
微笑みとは、大きな関係がありそうだ。入れ歯をはめたらどんな顔になるのか。

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ながめのわるいへや
なんて つまらない まどだろう。
そうだ、すてきなまどに しちゃえばいいんだ!

原画は、ヤン・フェルメールの「画家のアトリエ(絵画芸術の寓意)」だ。
フェルメールの絵は、落ち着いた絵だ。ウイリーが窓に描いている絵は、
カスパー・ダーヴィッド・フリードリッヒの「真昼」の絵が使われている。
とに角、いろいろ楽しませてくれる。この絵を読み解くのには、何時間
あっても足りない。

最後のページで、「ウイリーの絵の元になった絵を見てみよう。それぞ
れの絵には、また別の物語がある。ウイリーがどこに、どの絵を使った
かをあててごらん。ウイリーのことばも読んでね。」

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この絵本を見て、子どもが自分も絵を描いてみると言ったらすごいなあ。
実物を確かめに行きたいと言ったら、もっとすごいなあ。
アンソニー・ブラウンさんは、多才な方だ。『ウイリーの絵』の中で出て
くる有名な絵を知るだけでも大変だが、このいくつかの絵を元にして、
々な遊びを展開して、元の絵とは違った物語を創り出している。この技術
だけでも相当なものだ。
絵本に登場する絵を全部載せられたらいいのだが、それは大変なことなので、
素に一部だけにとどめさせていただいた。ムンクの「叫び」も見ていただき
たかった。
芸術の秋です。ウイリーと一緒に、絵を存分に楽しみ、遊ぼう。


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# by ehondamari | 2023-10-11 21:07 | Comments(2)

絵本で潤いのある生活を楽しむ


by ehondamari