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内田也哉子のすごさ


内田也哉子ー不可解さの魅力


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以前、絵本『たいせつなこと』フレーベル館を紹介した
ことがある。
かの有名な、マーガレット・ワイズ・ブラウン作、レナ
ード・ワイスガード絵の名作だ。1949年に、出版さ
れ、わが国では、2001年内田也哉子さんの訳で、知
られるようになった。
この本を紹介した時、本に書かれた
「あなたは あなた
あなたに とって たいせつなのは あなたが あなた
であること」
という、当たり前のことを当たり前として
書かれた大切な言葉を知らせたくて書いた。
この言葉を最近、ある機会に思い出し、心が軽くなって、
大切なことをうまく終えることができた。同時に、本の
内容も心に響くものがあったが、当たり前のことを、軽
やかな言葉でありながら、心の奥に忘れ物を残すかのよ
うに、巧みな翻訳をされた内田さんの素晴らしさに気づ
かされた。
内田さんは、内田裕也、樹木希林夫妻の娘で、夫が俳優
の元木雅弘さんであることは誰も知るところかと思われ
る。
内田也哉子さんの他の著作は、我が家には後3冊ある。
どれも傑作で、内容が濃く、私には難しいものが多い。

いつも目に着く場所に置いているものに、
マイケル・
デュドク・ドウ・ヴィット作(うちだややこ)『岸辺
のふたり』くもん出版
がある。この本の帯に、内田さ
んは
「あなたの大切な人はいま、どこにいますか。誰
かを想うこと。永遠に満ちることのない 現実がそこ
にある。」
と意味深な言葉が書かれている。この言葉
を読んでから、内容を読むと、なぜか余計わからなく
なってくる。とにかく難しい内容だ。実は、この本の
原点は、アニメーションで、多くの賞を受賞している。

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父と娘が自転車に乗って干潟を走っていく。土手の上で
自転車をとめた二人が「それじゃな」「・・・うん」
そのあと、父親は水平線に向かって舟をこぎ出す。
それ以来父親は、帰ってこなかった。長い年月が経ち、
娘は大きくなり、結婚し、子どももできる。
子どもたちが巣立ち、母親の役目も終え、年老いた娘
は、岸辺の土手を降りて、空き地に横たわる。
そこへ父が現れるが、娘の姿は昔の姿に変わっている。
これは、夢か幻か蜃気楼か。
アニメーション作家のユーリ・ノルシュテインは「この
作品は、愛への賛歌です。人と人の結びつきの尊さを、
真心を込めて描いています。人と人の間に横たわる、虹を
歌いあげているのです」と述べている。
父が死に、生涯忘れることなく愛し続ける娘の姿を生涯に
わたって描き続けた賛歌なのであろう。
今の時代に、肉親であったり、他人であったりする中で、
人と人の関係はこんなにも濃密につながっているだろうか。
短い言葉と単純化された絵が見事にマッチして、心の奥深い
多様な思いが、実にみごとに描かれた、佳作だ。
 この絵本を見ていると、ガブリエル・バンサンの『アンジュ
ール』が重なって見えてくる。絵本のスタイルが似ている。

これまでの2作とは、かなり異なる絵本で内田也哉子文、渡
邉良重絵『ブローチ』リトル・モア
という、これまた難しい
絵本がある。

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トレーシングペーパーを何枚も重ねて作った作品だ。短い
言葉と美しいイラストに目を奪われて、何度読んでも、意
味がつかめない。読めば読むほどにわからなくなっていく。
半透明の薄い紙を通して、次ページの絵がうっすら見えて
ますます心を乱される。まさに、女心の繊細さと複雑さに
男心は、幻惑されていくだけのようにも思われる。
この本の本心は何か、どうやら女性に解き明かしていただ
くしかないようだ。
表紙のシールに、「小さな祈りを胸にかざるー心を静かに揺
さぶる、ため息と希望の絵物語」とある。
ますますわからなくなってくる。


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レベッカ・ドートゥルメール作(うちだややこ)『恋するひ
と』朔北社
も、これまでとは少し違う。
内田さんは、どんな絵本でも、上手に料理される。sigh
boatというユニットでボーカルもやっているとのことな
ので、どの絵本にも自分好みのBGMを流していただくと、
メロディーにのって、さらにわかりやすくなるかもしれない。
「恋って なに? 恋するってどんな きもち?」と子ども
たちが集まって、ああだ、こうだと議論するが、その話の過
程が子どもらしい会話で楽しいのだが、案外大人が集まって
真剣に話し合ってみても、答えが出たような出ないような、
所詮は「恋とは、なぞ」ということになるのだろう。
絵がとても、かわいらしいが、この絵も謎だらけで、絵に弄
ばれているような気がする。

今回は、内田也哉子さん関連絵本にしぼってまとめてみた。
翻訳する絵本のチョイスがうまく、その本を見事に内田也哉
子さん特有の心の積み立て方で、也哉子流の絵本にしてしま
うところが、魅力なのかもしれない。私にとっては、何度読
んでも理解できないというか、難しすぎるというか、そんな
気持にさせられて、いつまでも引きずりまわされている感じ
だ。





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Commented by いちよ at 2017-10-25 23:29 x
「たいせつなこと」は、何年か前に、新しくできた書店の絵本コーナーで次々と立ち読みをしていて出会いました。心にぐっときました。自分を励ましてくれているような気がして購入しました。あれから何度か思い出しては読んでいます。気に入った絵本に出会えた時は、気持ちがリセットされて再び前を向けるから不思議です。
朝晩随分寒くなりました。今日、久々に実家の祖父に電話をしたら風邪をひいていました。年が明けたら94歳です。ちょっとした風邪でも心配です。先生も、お体に気をつけてくださいね。
そうそう、年が明けたら大津に行く予定があります。
Commented by ehondamari at 2017-10-26 09:56
いちよさん

『たいせつなこと』はいい本ですね。当たり前が当たらい前であることが、大変難しいときだけに、じっくりかみしめたいと思います。内田さんは天才肌のとても優れた方だと思います。もっと絵本にかかわっていっていただきたいですね。ほかの人では表現ができない才能の持ち主です。、大きな被害を琵琶湖にも残していきました。私が琵琶湖に住むようになって、初めての大きな台風の経験でした。また、今秋の終わりにも来ますね。今から心配です。大津にはどんな用事で来られますか。
先日の台風は
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by ehondamari | 2017-10-24 17:25 | 絵本と子育て・保育 | Comments(2)

絵本で潤いのある生活を楽しむ


by ehondamari