子どものパパ像
2019年 04月 19日
本屋さんの絵本売り場に立った途端、目に入ったのが、
スーシー作(高橋久美子)『パパといっしょ」トゥ―
ジンズという絵本だ。いつもの悪い癖が出て、 一目惚れ
で、内容も見ないで表紙だけで買ってしまった。
でかいでかいパパと小さな女の子の話だ。パパの大きさ
は並ではない。巨人だ。その割に足が小さくてかわいい。
その対照的な大きさの親子が、この世のものとは言い難
い可愛らしさだ。2人のほほえましいというか、愛らしい
かかわり方が、なんとも言えないぬくもりを感じさせてく
れる。
大きさの対比で、大人と子どもの違いを決める方法もある
が、この絵本における大人と子どもの違いは、大小の比較
を越えて強調されている。その違いを飛躍しての表現だと
すれば、現実を超えた絵本の世界ゆえに許される試みかも
しれない。少々誇大化することで、絵本の魅力を高めてい
るとも言える。
「パパといっしょなら わたし なーんでもできちゃうんだ!」
「パパとあそぶの だいすき」
「パパってね どんなにいそがしくても わたしのはなしをきいてくれる」
「パパがかなしいときは わたしが よしよし してあげる」
「パパが じょうずに かみを くくってくれるから」
どの場面を見ていても、パパは優しくて、全てを大きく包み
込んでくれる。パパの大きさは、体の大きさだけではない。
心の大きさと広さの象徴だと言える。パパは、全ての要求に
応えながら、子どもの成長を見守り、自分の成長にもつなげ
ていくのだ。とにかく、ここに登場するパパの表情が優しく
て、どんなことにも、しっかり応えてくれる力を備えている、
パパの代表として描かれている。
過去にも、父親と子どものかかわりを描いた絵本はある。
『パパといっしょ』にとても子どもの描く父親像が似ている
絵本で、私の大好きな絵本が2冊ある。
1冊は、ラルフ・ステッドマン作(安部直)『だあれ』架空社
だ。これまでにも紹介したことがあるような気がする。
子どもの父親自慢は、まず父親が強くて、何でも持っていて、
不可能がないことだ。要は、スーパーマンであることだ。
強い、多い、大きい、長いといった、優性遺伝子をすべて持
ち合わせた万能の存在でなければならない。
例えば、耳が大きく、目がでっかく、鼻が大きく、歯が沢山
あることなどがあげられる。
さらに、しっぽまであって、ゾウの鼻もあって、長いひげ
もあり、足もたくさんあるといった調子だ。
ここまでくると、一体、自慢した父親の姿は、全部合わせ
ると、どうなってしまうのだろう。
自慢も度が過ぎると、父親は誇りの存在ではなく化け物に
なってしまう。現実が的確に把握できる子どもならいいの
だが。いやいや、子どもにとって父親は、そのくらい自慢
したい存在だということだ。
強い、大きい、沢山あることなどを並べ立てて、自慢すると、
自分の父親が妖怪に化けてしまったことに気づいて、後悔す
ることもあるということだ。
もう1冊も、子どもの父親自慢の本だが、こちらは、強さだけで
なく、かっこよさも自慢するのだから、少しハイカラになってい
るなっている。
アンソニー・ブラウン作(久山太一)『うちのパパって かっ
こいい』評論社がそれだ。
この作品も、父親を自慢するする子どもであることは同じ
だが、、前作と少々自慢の角度が違う。まず登場するもの
や父親のガウンが全てチェックで統一されていて、カッコ
いいと私も思う。
オオカミを追っ払う強さがあり、ジャンプ力、綱渡り、プロ
レスラーよりも強く、走ることも大食いも、水泳も力も、楽
しさも、体の大きさも、かわいらしさも賢さも、きれい好きも、
歌もサッカーも、とにかくすべてにわたって不可能がない。ま
さにスーパーマンだ。
上の絵は、知る人ぞ知る、イタリアの3大テノールの一人と
して登場している。ホセ・カレーラスの代わりにお父さんが
歌っている。左がルチアーノ・パヴァロッティで右がプラシ
ド・ドミンゴだ。この絵をみただけで、私は単純に嬉しかっ
た。3大テノールのフアンであり、私もテノールだから、さら
に魅力を感じる。
他人が何と言おうが、子どもは自分のパパが大好きなんだ。
最後になるが、今回の『パパといっしょ』によく似た絵
本で、カール・ノラック文、イングリッド・ゴドン絵(
いずみちほこ)『ぼくのパパは おおおとこ』セーラー
出版がある。
またまた大男だが、子どもからすれば、大人は皆大きく見える。
当然のことだが、子どもにとって、この大きさの違いが、ミラク
ルをうみ出すのだ。この認識の落差が、頼もしさや、不可思議を
作り出し、尊敬の念を抱かせるということではないかと思われる。
私などは、すでに子どもの方が大きくなっていて、尊敬もされな
いし、頼りにされることもない。ここまで見放されてくると、気
持ちは楽になる。
それにしても、子どもから頼もしく思われるような親になること
は、とても大切だし、親の責任でもある。子どもと対等になって、
殴り合って、子どもを傷つけるようなことがあってはならない。
虐待とか、DVとか、さかんに言われる時代にあって、子どもから
尊敬される威厳ある大人の生き方をしっかり根づかせたいものだ。
オオイワカガミ(2019 4 19 自宅庭)
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midorigame
at 2019-04-21 16:31
x
永らくご無沙汰している間に春がやってきました。
春を探しにあちこちに出かけられているようですね。
さて、絵本のパパは強くて大きくて格好いい~感じですが、昨今の平成のパパを見ていると強いというイメージはあまり感じられないような気がするのですが・・・。
”優しい~”というイメージが表に出すぎているような印象が強いです。でも、子供と一緒に楽しんで遊んでいるという光景は目に浮かびます。
自分の子供を大事にして、DVや虐待の無い世の中になっていって欲しいですね。
春を探しにあちこちに出かけられているようですね。
さて、絵本のパパは強くて大きくて格好いい~感じですが、昨今の平成のパパを見ていると強いというイメージはあまり感じられないような気がするのですが・・・。
”優しい~”というイメージが表に出すぎているような印象が強いです。でも、子供と一緒に楽しんで遊んでいるという光景は目に浮かびます。
自分の子供を大事にして、DVや虐待の無い世の中になっていって欲しいですね。
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ehondamari at 2019-04-21 17:28
midorigameさん
久し振りですが、変わりないですか。
不順な天候に悩まされているうちに、もう5月が目の先に来ました。今日の琵琶湖は、春霞がかかったような、黄砂でぼんやりした山々が見えます。
平成のパパは、それなりに頑張っているのではないでしょうか。昭和のパパの私は軟弱なので、反論できません。絵本の中のパパは、皆頼もしく書かれていて、自分のパパと比較して、うなずいているのか、がっかりしているのか。どちらでしょう。
久し振りですが、変わりないですか。
不順な天候に悩まされているうちに、もう5月が目の先に来ました。今日の琵琶湖は、春霞がかかったような、黄砂でぼんやりした山々が見えます。
平成のパパは、それなりに頑張っているのではないでしょうか。昭和のパパの私は軟弱なので、反論できません。絵本の中のパパは、皆頼もしく書かれていて、自分のパパと比較して、うなずいているのか、がっかりしているのか。どちらでしょう。
「うちのパパってかっこいい」の、子どもを抱きしめているパパの表情がいいですねぇ
今、屋久島に来ています。黒味岳登山している時に、山椿と似ているリンゴ椿の花を見ました。ヤクザルたちが、リンゴ椿の花を摘み蜜を舐める様子がとてもかわいいそうです。
南国うらしまそうも沢山見る事ができました。新緑の緑が鮮やかな中のリンゴ椿の赤い花は、鮮やかな美しさでした。
標高1831メートルの黒味岳の頂上には、40メートルほどの高さの巨石が乗っていて、不思議な光景です。そこによじ登り上でお弁当を食べ、爽快な気分❣️
白谷雲水峡は、もののけ姫のモチーフになったとされる「苔むす森」があり、一面びっしりと苔むす森の中で、光る新緑の季節と、うっとりと見惚れる美しさでした。
今、屋久島に来ています。黒味岳登山している時に、山椿と似ているリンゴ椿の花を見ました。ヤクザルたちが、リンゴ椿の花を摘み蜜を舐める様子がとてもかわいいそうです。
南国うらしまそうも沢山見る事ができました。新緑の緑が鮮やかな中のリンゴ椿の赤い花は、鮮やかな美しさでした。
標高1831メートルの黒味岳の頂上には、40メートルほどの高さの巨石が乗っていて、不思議な光景です。そこによじ登り上でお弁当を食べ、爽快な気分❣️
白谷雲水峡は、もののけ姫のモチーフになったとされる「苔むす森」があり、一面びっしりと苔むす森の中で、光る新緑の季節と、うっとりと見惚れる美しさでした。
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ehondamari at 2019-04-22 08:05
こあらさん
屋久島へ行っているのですね。いいですね。まずは体力があるということですね。私には到底無理だと思います。
リンゴ椿とはどんな花でしょうかね。でっかい丸い花でしょうか。屋久島は行きたいと願いながら、一度も行けていません。代わりに焼酎の「三岳」を呑む程度です。
しっかり楽しんできてください。
屋久島へ行っているのですね。いいですね。まずは体力があるということですね。私には到底無理だと思います。
リンゴ椿とはどんな花でしょうかね。でっかい丸い花でしょうか。屋久島は行きたいと願いながら、一度も行けていません。代わりに焼酎の「三岳」を呑む程度です。
しっかり楽しんできてください。
by ehondamari
| 2019-04-19 22:15
| 絵本と子育て・保育
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