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たんぼレストラン



少々、季節外れだが、書店で地元の作家の絵本を見つけ、買い求め
て読んでいたら、おおらかな気持ちになれたので、多くの人に読ん
でもらいたく、紹介することにした。。

はやしますみ作『たんぼレストラン』ひかりのくにという絵本だ。


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以前、『ねこぼん』という琵琶湖唯一の有人島沖島を舞台にした
と思われる絵本を取り上げたことがある。その時の作者が、はや
しさんだった。
今夏の絵本も、実に個性的で着眼点の鋭さに魅かれて、すぐに購
入した。
なんといっても、いつも散歩している所と似た田んぼでの話に親
近感を感じた。田んぼにレストランとは、思いもしない発想だ。
絵も大ダイナミックで、おおらかで、のびのび描かれている。
おおらかに見えて、田んぼの中のレストランはし烈だ。生きるか死
ぬかで、商売が成り立つレストランだ。食べるものがいれば、食べ
られるのもいる。実は我々の食事も、同じ関係で成り立っているの
だが、そんなことを考えないで食べているだけだ。

中扉から話ははじまっている。「こんにちは 田んぼレストランは
やっていますか」と誰かが訪ねてくる。すると田んぼの土の中から、
「まだです まだです まだですよ」と返事が返ってくる。

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冬眠中の生き物は、まだ目覚めていない。彼らが眼を醒まさないと、
レストランは開かれない。「もうすぐ もうすぐ もうすぐですよ」
と返事が返ってくる。目覚めてはいるようだ。眠っている生き物の
ところまで、何か大きなものが、大音を立ててけたたましく入り込
んでくる。「うおん うおん うおん うおん・・・」と田起こし
の耕運機が春を告げるかのように、始動をはじめたのだ。



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耕運機が動きはじめたということは、レストランがオープン
の合図だったのだ。
「お待たせしました!たんぼレストランはじまります」
この一声で、一斉に生き物たちは、「いただきま~す」と、
飛びつくように食べはじめた。食べられはじめたとも言える。
広い田んぼレストランを舞台に、生死をかけての、生存競争
だ。これが生きているものの宿命だ。

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田んぼに水が入ると、まずは 小さなお客様から登場だ。
そこへ段々大きなお客様がやって来て、食事というよりも、
死闘が繰り返される。

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田植えが済むとレストランは大賑わいだ。水を求めて、様々な
生き物が集まってくる。

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大きなナマズがやって来て、大きな口を開けて、小さな魚たちは、
吸い込まれるように食べられてしまう。ナマズは水中の王様だ。


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ザリガニは、大きなハサミで次々と小さな生き物を食べていく。
ナマズの子どもも、食べられてしまう。カメは、タニシやツボガ
イを食べる。水の上を泳ぎながら、鴨たちは草を食べている。
シラサギやアオサギもやって来て、ザリガニなど田んぼにいるも
のは、何でも食べてしまう。

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時には、キツネやサルのような4足の大きな動物もやって来て、
狩猟をする。
田んぼのレストランは、大きな大きな店で、食べ物も豊富で、
お客も常連がほとんどだが、中には、特別な客もやって来て、
それはそれは、にぎやかだ。
夏になると、米が大きくなって花を咲かせ、いい匂いだ。

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秋になると、稲穂が実り、頭を垂れはじめる。
この時期は、田んぼには水がないので、客層も変わってくる。
スズメや、イナゴ、バッタ、カマキリ、トンボなど、実った
コメを目指してやって来る。彼らは、またそれなりに大きな
生き物たちに食べられることになる

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稲刈りが終わると、レストランは、閉店となる。
また、来年までお休みということだ。

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田んぼをレストランと見立てて、大規模で豪快な話を展開されている
ことに、大いに感心する。出てくる生き物が70種類にのぼるとのこ
と、ただただ驚くしかない。表紙の見開きには、丁寧に書かれた生き
物のデッサン画がぎっしり載せられている。それを見るだけで十分生
き物事典と言える。
サラーっと書かれて、触れてもいないが、生態系の存続の厳しさが、
深く刻み込まれていて、改めて自然の生態系と向かい合っていく厳
しさを知らされ、輪廻転生の深さと向かい合ってみた。
表面的には、美しくて平穏な田園風景だが、その奥の方では、生死
をかけての激しい戦いが繰り広げられているのだ。

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Commented by こあら at 2020-11-27 18:38 x
なんてダイナミックな絵本❣️
レストランでごちそうを食べる生き物たちの生き生きとした表情に、圧倒されます。
 お米を作るという人間の営みが、こんなにも生き物たちに関わっているなんて驚かされます。
 今日は、京都の秋の特別公開に出かけました。  朝一で行った清凉寺は、まだ誰もいなくてゆっくりと楽しみました。ところがあとは、どこに行っても人が多くて
さすがに京都の紅葉🍁は、混んでること‼️
でも、これからいつ来る事ができるかと思うと・・・
1月下旬には、冬の特別公開に期待してるのに、どうなるか心配です。
Commented by ehondamari at 2020-11-27 20:16
こあらさん

京都に来ていましたか。京都は、ここにきて、車も人も多くなってきています。私は、東本願寺へお参りに昨日行きました。報恩講という行事があって、何時になく大勢の人がいました。
清涼寺は嵯峨野なので、一番人の多い地域でしょうね。清凉寺のすぐ近くに森嘉という有名な豆腐屋さんがありますね。寄られましたか。
秋の非公開重要文化財のチケットをいただいているのに、コロナで行けていません。
今回の絵本は、すごい舞台での死闘ですね。年がら年中、田んぼレストランは、関ケ原の戦いだと思います。
間もなく12月ですね。寒くなって来たし、コロナは広がるしで心配が付きません。気を付けてください。
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by ehondamari | 2020-11-26 12:53 | Comments(2)

絵本で潤いのある生活を楽しむ


by ehondamari