大きな国は強い国?!
2021年 01月 20日
『ぞうのエルマー』シリーズで、知られる、デビッド・マッキー
さんの絵本を1冊取り上げてみたい。
デビッド・マッキー作(なかがわちひろ)『せかいでいちばんつ
よい国』光村教育図書という絵本だが、色々考えさせられる。見
れば見る程、色々なことが浮かんできて、何が本当のことで、正
しいのかわからなくなってくる。答えは自分の中にしかない。
あるところに大きな国があった。その国民は、自分たちの暮らしが
一番素敵だと確信していた。大きな国の大統領は、いろんな国へ戦
争に行った。世界中の人たちを幸せにするためには、世界中を征服
すれば、我々と同じように暮らせると、信じてのことだった。
迷惑で身勝手なおためごかしだ。
他の国の人々は命懸けで戦いました。けれど最後は、負けてしまいました。
征服されていない国は、たった一つになった。あんまり小さな国なので、
大統領は、ほおっておいたのだ。一つだけ残しておくのも気持ちが悪い。
ということで、大統領と兵隊たちは出発した。
驚くことに、小さな国には、兵隊がいなくて、戦争ができない。それど
ころか、兵隊たちをお客さんのように、歓迎した。大統領は一番立派な
家をもらい、兵隊たちは、あちこちの家に泊めてもらうことになった。
大統領も兵隊たちもすることがなくて、小さい国の人たちとおしゃべりや
石けりをしたり、昔話を聴き、小さな国の歌を習い、冗談を聞いて笑い転
げ、過ごした。これはとっても平和で、いいではないか。
小さな国の食べ物がかわっていて、その味みをしたり、他にすることもな
いので、その国の人々の仕事の手伝いをするようになる。
大統領は、その様子を見ていて、怒り出し、兵隊を国に返し、もっとしゃ
きっとした兵隊を呼んだ。
新しくやって来た兵隊と、帰国する兵隊の違いは分かるだろうか。
ところが、新しい兵隊たちも、全く同じことになってしまった。
大統領は、こんなちっぽけな国に兵隊はいらなことに気づき、見
張りだけ残して、国へ帰ってしまった。
この判断は正しかったと大統領は、自分を評価したであろうか。
大統領がいなくなると、兵隊たちは普段着に着替えて、野原や畑
で働きはじめた。
大統領は、いつものように勇ましい歌を歌いながら、兵隊たちと
国へ帰ってきた。「せかいを すくう せいぎの みかた! 大
きい国は つよい国」と意気揚々の凱旋だ。
懐かしい故郷への帰還。ところが様子が変だ。あちこちの家から、
小さな国の料理の匂いがし、石けり遊びが流行り、服まで小さな
国の服を着ているのだ。大統領は、「まあ、いいさ、これも、せ
んそうで ぶんどってきた ものだから」と、にたりと笑う。
物は考えようだ!?
その晩、大統領は、息子に歌をせがまれて、目をつぶり、心に浮
かぶ歌を、次々と歌うのだった。その歌は、一つ残らず彼が、征
服した小さな国の歌だった。
はたして、この大統領は、戦争に勝ち、文化も征服したのだろうか。
征服され、洗脳されたのは、大統領の方だったのではないのか。
その結末は、この絵本を読む人の判断次第だろう。意外とこれが平
和への道だったかもしれないから。
戦争の勝利は、果たしてどちらなのか。誰なのか。そんなものがあ
るのか。戦争文化は、文化ではなく、単なる破壊凶器でしかない。
文化とは、心を耕し、心と生活を豊かにするもののことを言うのだ
から。
そのような文化は、絵本の中に沢山詰め込まれている。
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by ehondamari
| 2021-01-20 09:20
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